飲食店では、開業に当たって各種の手続きが必要になります。「食」の提供は命に関わる部分でもあるので当然です。手続きの中には、保健所が発行する営業許可書のように、実際に店舗での立ち入り調査を必要とするものや、資格を取得するために講習に通わなければならないものもあります。
いざとなってから、許可や資格がないからオープンできないとならないように、計画的に準備を進めるようにしてください。
飲食店の開業に必要な資格・申請手続
飲食店を営業するときには、必ず「営業許可」を得るために各種申請手続きが必要です。
都道府県によって条件が若干異なりますので、開業する都道府県での規定に店舗設計を行うようにします。
食品衛生責任者の資格
窓口: 保健所(食品衛生協会)
時期: 開業2ヶ月前
営業許可の申請
窓口: 保健所
時期: 工事前
防火管理者の資格・消防署への届出
窓口: 消防署
時期: 設計段階
開業届の提出(個人事業主の場合)
窓口: 税務署
時期: 開業後1ヶ月以内
食品衛生責任者の資格
最初に取得したいのが「食品衛生責任者」の資格です。食品の製造販売や飲食店を経営するなど、食品に関わる事業を行う場合、必ず必要になる資格です。
食品衛生協会が行う講習に1日参加し、衛生法規(2時間)、公衆衛生学(1時間)、食品衛生学(3時間)を受講します。その場でテストに合格すればすぐに資格を得られ、食品衛生責任者手帳が交付されます。
- 受験資格: 17歳以上の男女(高校生は除く)
- 受験費用: 1万円(教材費含む)
- 試験時期: 月に7~8回実施
- 備考: いずれも東京都の場合。ただし取得した資格は全国で使えます。
参考サイト
社団法人東京都食品衛生協会 http://www.toshoku.or.jp/
なお、栄養士、調理師、製菓衛生師、食鳥処理衛生管理者、船舶料理士、食品衛生管理者の有資格者の方は、講習なしでも申請をすることで食品衛生責任者になれます。
保健所に申請する営業許可申請
飲食店を開業するにあたり、営業許可は欠かせない資格です。営業許可を取得するには、保健所の立ち入り検査が必要です。つまり、厨房工事が完成してからしか申請ができませんので注意が必要です。
取得するまでの流れ
- 事前相談
施設の工事着工前に設計図を持参のうえ、最寄りの保健所に相談に行きます。不備な点は工事前に修正できます。食品衛生推進員を紹介してもらい、助言を受けます。 - 申請書類を提出
施設の工事完成予定日の10日以上前です。 - 施設検査の打合せ
保健所の担当者と工事の進行状況の連絡方法や検査日時等の打合せをします。 - 施設完成の確認検査
施設基準に適合しない場合は許可にならず、改善後、再検査になります。これに合格しなければ開業することができませんので注意します。開業予定者の立会いが必要です。 - 営業許可書の交付
確認検査後、約1週間かかります。
連絡が来ますので、印鑑持参で保健所に受け取りに行きます。 - 営業開始
許可証を見えやすい所に掲示して、営業開始となります。
必要書類一覧
自治体によって若干異なりますので、開業する自治体での規定に沿って行いましょう。
- 営業許可申請書 (保健所の所定用紙)
- 営業設備の大要、配置図(施設の平面図、店舗周辺の地図が必要)
- 食品衛生責任者選任届 (証明書類)
- 印鑑 (法人の場合は代表者印)
- 法人の場合は、登記事項証明書(登記簿謄本原本)
- 申請手数料
営業許可の変更
許可の期間中に、以下の変更事項があれば「変更届け」の提出が必要になります。
- 営業者の自宅住所(法人の場合は本社所在地)
- 氏名の変更(法人の場合は名称、代表者の変更)
- 屋号の変更
- 施設、設備の変更
- 廃業する場合
- 許可証を破損、紛失した場合
- 合併や分割、相続による営業許可の承継
- 食品衛生責任者の変更
※営業者が変わった場合は変更届ではなく、旧営業者は廃業届け、新営業者は新規の営業許可が必要になります。
営業許可の更新
飲食店営業許可には許可期間があります(5~8年)。引き続き営業するには、期間満了前1ヶ月以内に更新手続きを行わなければなりません。更新しないまま営業を行うと無許可営業となり、食品衛生法違反となります。
参考サイト
全国保健所長会 http://www.phcd.jp/
全国保健所一覧 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/hokenjo/
防火管理者の資格・消防署への届出
消防法では、多数の人が利用する建物などの火災による被害の防止を図るため、一定規模の防火対象物(※1)の管理権原者(※2)は、有資格者の中から防火管理者を選任し、防火管理に係る消防計画の作成と、その消防計画に基づく「防火管理上必要な業務」を行わせなければならないとされています。
防火管理者は、この管理権原者によって選任された「防火管理業務の推進責任者」です。
※1:防火対象物 建築物や工作物など、火災予防の対象となるもの(の全体)をいいます。
※2:管理権原者 防火対象物の所有者や借受人、事業所の代表者など、管理行為を当然に行うべき者(防火管理の最終責任者)をいいます。
取得方法
消防署で行う防火管理資格講習会を受講すると資格が付与されます。
なお、講習の課程を修了することにより取得できる資格は、講習種別によって「甲種防火管理講習」の修了資格と「乙種防火管理講習」の修了資格とに区分されますが、いずれも「講習修了資格」であって、管理権原者から選任されなければ「防火管理者」ではありません。
また、乙種防火管理講習の修了資格では、選任できる防火対象物が小規模なものに限定(※3)されます。
※3:乙種防火管理者に選任できる防火対象物
・ 延べ面積が300㎡未満のもの
・ 収容人員が30人未満のテナント等
劇場・飲食店・店舗・ホテル・病院など不特定多数の人が出入りする建物(特定防火対象物)のうち、収容人員が300人以上で甲種防火対象物の防火管理者に対しては、5年以内ごとに再講習を受講することが定められています。
全国どこでも有効な資格です。
防火管理者の仕事
- 消防計画を作成し、所轄の消防署に届出します。
- 消火・通報および非難などの教育訓練を行います。
- 消防用設備等の点検・整備を行います。
- 火気の使用または取り扱いに関する監督業務を行います。
- 非難または防火上必要な構造・設備の維持管理をします。
- 収容人員を管理します。
防火管理者の選任及び解任
防火管理者の選任及び解任にあたっては、遅延なく所轄の消防署に届け出なければなりません。
選任の届出にあたっては、講習終了の写しや防火管理者の資格を有する書面を添付しなくてはなりません。
参考サイト
東京消防庁 http://www.tfd.metro.tokyo.jp/sk/index.html
財団法人日本防火協会(東京都などの政令指定都市以外の講習会) http://www.n-bouka.or.jp/
税務署への開業届の提出
開店前~開業後1ヶ月以内に「開業届」を所轄の税務署に提出します。
個人事業の場合「個人事業の開廃業等の届出書」という書類になります(書類は税務署にあります)。
その他に、「青色申告承認申請書」を2ヶ月以内に提出する必要があります。その年の1月15日までに開業した方は、3月15日までに提出します。
従業員を雇用する場合は「給与支払事務所等の開設届出書」を提出します。
※開業届を提出される方は、青色申告承認申請書も同時に提出しておいた方が、税務署に2度足を運ばなくて済むのでおすすめです。
参考サイト
国税庁 http://www.nta.go.jp/
個人事業の開廃業等届出手続 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm
所得税の青色申告承認申請手続 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm