飲食店において、現金はさまざまなシーンで使用します。売上げはもちろんのこと、備品を購入する小口現金なども店長が管理するべきものでしょう。
ここでは、飲食店で扱うお金について考えて行きます。

 

飲食店に現金はつきもの

クレジットカードや交通系電子マネーが使われる機会が多くなっています。2019年の消費税増税を機に政府がキャシュレスを推進していますが、日本の飲食店では、まだまだ現金で支払われることが多くなっています。そのため店舗管理にあたっては、金銭管理を厳格に行い、正確さをもとめるのは非常に重要なことです。

たとえ10円であっても頻繁に違算が出る店舗は、ほとんどの場合、「店長がリーダーシップを発揮してない」「スタッフの仕事に対する意識低下」などのマイナスの要素が現れたものです。また、「店長が金銭管理を厳格に行う姿勢を見せていない」というような状況では、店舗のモラルは乱れるなど、他にもマイナスな点が多く見られます。

現金は、お客様からいただくサービスの対価であり、それがなくては自分の給料がでないことはおろか、店舗の存続も危ぶまれます。つまり、現金が重要だと言うことを教えることは、自分たちやサービスを提供することの意味を教えることとイコールなのです。お金を扱うことへの緊張感をもたせるようにしてください。

 

小口現金とは、店舗用の財布のようなもの

小口現金とは、店舗用の財布のようなもの

小口現金とは、お店の「財布」となるものです。店長や従業員が自分の財布からお金を出金して買い物をしている姿は、正しい姿ではありません。また、「買い物に行くから」とレジからお金も持ち出すのもNGです。お店用の財布を作り、買い物はその財布から入出金させます。このようなお金を「小口現金」といいます。

そのほかにも、文房具や小切手の購入など、細かな費用の支払いを小口現金から行います。

小口現金は、現金残高とレシートの合計が、「小口入金金額」に合致するように管理します。

 

定額資金前渡制度(インプレストシステム)

定額資金前渡制度とは、あまり耳にしない制度かもしれませんが、実は多くの小口現金がこの仕組みを使って支払われています。これは、一定期間分のまとまったお金を担当者に渡しておき、担当者はそれを店舗の財布に入れておきます。そして、そこからさまざまな支払いを済ませ、明細を「小口現金出納帳(または現金出納帳)」に記載するシステムです。

通常は、小口現金出納帳に記載する担当を店長に負わせますが、必ずしもそうでなくてはならない訳ではなく、経理担当やオーナー自らが行ってもかまいません。ただし、飲食店では、仕入れに小口現金を使用することも多く、ここできちんと管理しなければ、なぁなぁになってしまいます。正しい管理を行っている姿を見せるようにしてください。

定額資金前渡制度(インプレストシステム)

売上管理とは

飲食店は日銭が入る仕事です。そのため、「資金繰りがしやすい」等という声も聞こえてきますが、そうでしょうか?

日銭は入りますが、逆に、大きな金額が一度に入ることもありません。しかし、税金や各種ローンなどの支払いは大きな金額で支払う必要があります。

また、開業初期では、キャッシュフローを掴みにくく、最初は口座にお金がある状態から始まりますが、会計帳簿上には利益が出ているのに手元にお金が残りにくい状態が発生します。「黒字倒産」などという言葉を聞いたことがあるかと思いますが、経営経験のない人が正確なキャッシュフローを掴まないと、黒字でも苦しい状態へと陥るのです。そうならないために、しっかりとした管理と現状把握が必要となるのです。

キャッシュフローの基礎知識

キャッシュフローの基礎知識

キャッシュフローとは、「資金繰り=お金の流れ」のことをさします。飲食店ではお金の流れが見えづらく、オーナー自身がお金の流れが見えていないことがあります。

例えば、お酒や食材の支払いを日々行わず、1週間や1ヶ月分をまとめて支払っていることが多くあります。この買掛金システムを「支払いサイト」と呼び、飲食店で一般的に行われていることです。

その一方で、売上げは毎日発生し、多くの場合は現金でお金が入ってきます。日々現金が入ってくるのに、支払いは1ヶ月後。ここに飲食店のキャッシュフローの難しさがあります。

例えば、支払いサイトが1ヶ月の場合、12月の忘年会シーズンに売上げが伸びると、急に金回りがよくなってしまうケースがあります。しかし、その支払いをするのは1ヶ月後。1月はお正月休業によって営業日数も少ない中、12月の支払いをしなければならず、非常に苦しくなってしまいます。

さらに、店舗には、家賃の引き落としや水道光熱費の支払いがあるほか、消費税の積み立てや事業税の支払いが発生します。これらは決して安い金額ではありません。それらの金額は、日々の売上げから捻出しなければならないのです。これらをすべて把握して、はじめて経営がうまくいくのです。

口座は2つ作り、ひとつは積み立て管理口座とする

これに対応するために、口座を2つ用意し、毎月定時定額で積み立てを行うことをおすすめします。まずは一旦、売上げを口座に入れます。これにより、売上金が確定されます。
次に、①広告費用、②消費税分、③お店の損益に直接関係しない費用を、定期的に別口座の方へ移します。

これは、月に一度くらいが適当でしょう。売上げ入金の口座では、口座内でPLが描けるように調整し、月末利益は、引き落としのための一定額を口座内に残し、残りを別口座に資金移動するのです。これによって、キャッシュフローを掴みやすくすることが大切です。