飲食店が生き残っていくには、売上を上げ、しっかりと利益を確保していくことが重要です。

とはいえ、繁盛店がどれぐらいのコスト割合で成り立っているのかを見たことがない人がほとんどではないでしょうか?

そこで、千串屋総本店の実数字を記載したP/Lを公開します。これを見ていただいた上で、どのように儲けを出せばいいのか、どのような工夫が必要なのかを感じていただければと思います。

 

利益確保ができている飲食店のP/Lを見てみる

以下が、千串屋総本店のP/Lです。年間の売上は約5,570万円。このうち経常利益は約1,290万円ですので、中規模飲食店としてはかなり優秀な数値だと思います。

アルバイトを適正に稼働させることで売り上げを確保しながら、原価率や人件費を適正に保つことで十分な利益を確保している成功事例と言えるでしょう。

飲食店が利益を増やすために必要な3つの要素

上記の結果は、さまざまな工夫と努力があって達成できたものです。特に、「いかにして利益を増やすのか?」という点に苦労されている方が多いと思います。

飲食店では主に、以下の3つが利益確保に必要だと言われています。また、私たちも以下を意識して行動してきました。

1.売上高を上げる=QSCを徹底する
2.固定費を下げる=光熱費や消耗品などの使い過ぎをなくす
3.変動費を下げる=仕込みや調理過程での廃棄ロス確認・スタッフシフト管理とシフトカットする

*QSCとは、商品クオリティー(Q)、スタッフのサービス(S)、クリンリネス(C)を表します。

これらはどれも、店長の裁量の範囲と言えるでしょう。では、それぞれを詳しく見ていきましょう。

1.飲食店が売上高を上げる方法

売上高は、以下の式で表すことができます。

売上高 = 客数 × 客単価

店内でQSCを徹底することは飲食店の基本です。ただし、それを徹底するのは一定レベルの満足を得ることにしかなりません。さらに満足を高めるには、さらに工夫が必要です。

そのひとつが「サービス品の提供」。これは、チェーン店では行っていないところが多く、お客様にとっても特別なサービスだと感じるため、客数の増加に直結します。

その時期ならではの旬の野菜などを使えば、仕入単価が高くなることもなく、それでいて季節感もあるためお客様にも喜ばれます。ここでポイントとなるのは、普段家で食べられないものにすること。スーパーでは手に入りにくい食材を農家から直接仕入れるのが理想的ですが、スーパーに売っているような一般的な食材を使う場合でも、少し工夫して調理することで特別なメニューに仕上げることができます。「サービス品だから」と手を抜いたりせず、心を込めて仕上げることが大切です。

飲食店が売上高を上げる方法

2.飲食店が固定費を下げる方法

飲食店では、無意識に営業をしていると、光熱費過多と消耗品費過多になるケースが多くみられます。たとえば、仕込み時間には無駄なライトを点灯しないとか、エアコンの調整、おしぼりや箸などの無駄使いを防止することなどで簡単に節約できます。

エアコンに関しては、適正温度に設定することはもちろん、営業時間中の排気ダクトのコントロールで効率を上げることができます。ひとつひとつは小さな節約ですが、あらゆる部分に配慮することで、利益確保につながります。

特に水道は水の出し方によって水量が変わりますし、出しっぱなしにする時間が長くなると当然水道料金が高くなります。皿や箸などを洗うときはもちろん、営業終了後に厨房機器を洗うときに、水を出しっぱなしにする習慣はなくしましょう。中でも、お湯を使う場合は、ガス代や電気代も連動して高くなりますので、特に注意が必要です。
ただし、食材の仕込みでは、衛生の観点から流水が基本となっているものもあります。これは例外事項として徹底することも欠かせません。

また、炭火焼き鳥店の場合、炭代も大きくなります。使用する炭の消耗は、最初の火の付け方や炭の組み方、投入する炭の量によって大きく変動します。私たちの例では、しっかりと炭を組んで酸素が入りにくい状態をつくり、不要な炭の投入をさけるための目安を徹底したところ、ひと月で2万円(約4箱分)も炭の消費量を減らせています。

飲食店が変動費を下げる方法

3.飲食店が変動費を下げる方法

毎日の営業の中で変動費を下げるには、毎日の自店のF(Food cost=仕入高)とL(labor cost=人件費)値を把握する必要があります。そのためにも、毎日のレジ〆時には日計表に正しい数値を記入し、自店の利益ポジションを把握することが、第一段階の作業となります。

一般的に、飲食店におけるFL値の基準を示しておきます。

FL値51%=最良
FL値55%=通常値
FL値60%オーバー=危険数値

人時売上高の確保

「人時売上高」という言葉を正しく答えられるでしょうか?

この模範的な回答は、
「1日の売り上げに対して従業員の総労働時間から算出した売上高」です。

計算式は以下になります。

人時売上高 = 純売り上げ ÷ 総労働時間

適正金額は、概ね5,000円と言われています。

人時売上高は、金額が高ければ高いほど人件費を抑えられていることになります。ただし、飲食店においては、この人時売上高を上げることに注力しすぎると、大変な失敗をすることになります。この数字は、実に難しいものなのです。

例を挙げて説明したいと思います。

飲食店Aでは、1日に20万円の売り上げがあります。この売上げを上げるのに、4人で営業するのと、6人、8人で営業するのでは、必要な人件費が変わってきます。
1人当たりの勤務時間数によりますが、普通に考えれば8人より6人、6人より4人のほうが人件費は少なくなります。ここで人時売上高を少しでも高くしたいと考えれば、4人で営業することを選択してしまうでしょう。

ただし、実際の営業状況を見てみると、4人での営業ではあまりに余裕がなく、最低限の商品提供をするのがやっと。トイレのチェックなどには手が回らず、商品提供も遅れがち。追加オーダーをしたいとお客様が声をかけても、すぐに対応ができない状況になっています。

1日だけで考えれば、この日の人時売上高は高く、大きな利益を確保できたかもしれません。でも、その一方で、お客様の満足を得るのは難しい状況です。それでは、再利用していただくことは難しくなってしまいます。

逆に、8人で営業し、従業員1人当たりの仕事量を減らせば、サービスの質が向上し、料理やドリンクのスピード提供も可能になります。これは、お客様の満足につながります。でも、その一方で、人件費が多く必要となり利益を圧迫します。この状況では店舗を存続させていくことは難しくなります。

では、6人が適正なのでしょうか?

適正な従業員数は店舗の状況によって違うと思いますが、人時売上高の確保とお客満足は表裏一体。アルバイトのシフトを作成するときには、総合的な視野を持つことが重要となります。

原価管理

原価管理

飲食店でいう「原価」とは、主に食材(ドリンクを含む原材料費)のことです。お客様に商品として提供されるものすべてに原価が存在し、一品ごとに細かく金額が設定されています。また、売上げのうち、どれくらいの割合を占めているのかを表すのが「原価率」です。

ここでポイントとなるのは、腐敗して廃棄せざるを得なくなったものや調理ミスでのロス、商品のオーバーポーション(レシピよりも過剰に盛り付けたりすること。例えばサラダ60gのところに80g盛り付けて提供するなど)も原価としてカウントされていくことです。

飲食店のおける原価率の基準値は30%と言われています。私たち、千串屋では22~29%に抑えることができます。ですが、どんなに高い売上げを確保していても、食材管理が甘くロスが多い状況では、原価率22~29%もちろん、30%も超えてしまいます。そのような状況では、利益が圧迫され、純利益額が下がってしまいます。

こうならないためには、アルバイトが作る商品のチェックや調理ミスを出さないための指導が重要であり、廃棄食材を極力減らすためには、綿密な売上げ予測に基づいた発注と仕込み量のコントロールも店長の重要な職務となるわけです。

ただし、原価を意識しすぎるあまり、間違ったコントロールをしようとする飲食店があります。それは、食品ロスをなくすために傷んだ食材を使用したり、レシピより食材を減らしたりすることです。これは客離れにつながり、売上げが落ち、利益も出なくなります。お客様第一であるはずの飲食店で、このような間違った原価コントロールはするべきではありません。

安全で良質な食材を使って、レシピ通りの料理を提供しながら原価率も守る。これは難しいことですが、店舗でできる経費コントロールの金額の大きいものの一つなので、特に重要な職務としてとらえておいてください。

 

その他の経費コントロール

営業を行うのに必要な経費として、食材(ドリンク)原価と人件費を挙げましたが、店舗には他にもいろいろな経費があります。これは、大まかに分けて2つのタイプの経費があることは前述の通りです。売り上げに応じて変化する変動費、売り上げ等に左右されない固定費があり、食材原価と人件費は当然、変動費に属します。水道代やガス、電気料金等も水道光熱費として毎月変動していきます。他には、求人誌等を利用した時に発生する求人広告費、各種媒体を利用した広告に使用する広告宣伝費もあります。

固定費として主なものは地代家賃や減価償却費が挙げられます。

経費コントロールをするには、まず、これらの数値を正しく理解しなければなりません。行き当たりばったりで経費を使い、後で帳票類を見て驚いた…ということでは利益を生み出すことはできないのです。

また、PL(損益計算書)の他にもお客様アンケート、営業日報など、過去や現在の店の状態を表すデータはいろいろあります。それらは、今後の店の売り上げを伸ばすためや、顧客満足度を上げるツールとして、多くの情報が詰まった資料です。これらを有効に使用することができなければ、ただの数字や文字の羅列に過ぎません。有効活用するための読み取り方を身につけ、数値の面から店の状況を読めるよう努めてください。