飲食店を始めるには、さまざまな帳票類が必要となります。中でも重要なのは、採用や雇用に関する書類です。最近は、「ブラックバイト」と言うような言葉も登場し、あっという間に悪い噂が広まってしまい、人手不足に陥ります。そうならないために、店舗側が正しい帳票管理を準備し、理論武装しておくことも重要となっています。

また、飲食店で外国人を雇う機会が増えていて、彼らを雇い入れるには特別な書類があり、仕事時間にも制約がある人がいます。

人事管理や雇用に関する帳票類を作るには専門家によるアドバイスを入れるべきなのですが、なかなか実行できていない店舗が多いのが現状です。弊社でプロデュースしているお店には、これら必要な書類を全てエクセルやワードといった身近なソフトで作成し、お渡ししています。これらは、どのようなお店でも必要なものだと思いますので、ここで紹介したいと思います。

なお、採用や人事管理に関する書類武装の重要性は、以下の記事でも紹介しています。

飲食店での経営管理システムの必要性。どんぶり勘定の危険性とそろえるべき帳票類

シフトサンプル

シフトサンプル

飲食店をやったことがない方は、初めて見る人が多いと思います。また、飲食店経験者でも、実際にシフト作成に適したフォーマットはなかなか見当たりませんし、自ら作るとなると苦労するものです。
毎日使うものであり、多くの人が見るものだからこそ、見やすく分かりやすいものが大切です。

 

月間給与予算計算表

月間給与予算計算表

人件費は、店舗の経費管理でも特に重要なものです。給与計算などは外注したり、専用ソフトを使って管理したりするものもありますが、予算段階から管理できるというものは意外にありません。実際にその月が終わって、人件費を計算してみて初めて予算オーバーしていることを知るのでは非常に危険です。予算段階から日々管理し、コントロールできるようなフォーマットを準備すべきです。

 

雇用契約書・身元保証書他

雇用契約書・身元保証書他

個人店では、契約書や身元保証書が無いままアルバイトを採用しているところが多く、非常に危険なことです。弊社では、雇用契約書だけでなく、身元保証書など採用に関わる書類を一通り揃えています。これを使用することは、何かのトラブルになったとき、店舗を守る最低限の裏付けとなります。正しいフォーマットを使って、必ず雇用時に作成するようにしてください

 

時間外深夜勤務・出張申請書

時間外深夜勤務・出張申請書

イレギュラーな時間外勤務や出張などに関する書類も揃えておく必要があります。普段あまり使わないものだからこそ、いざという時準備がなく、焦ってしまうのはよくあること。いつでも、すぐに出せるようにしておくことが重要です。

 

社員採用概要

社員採用概要

アルバイトと違い、社員は採用する時に気をつけなければならないことが多くあります。その一方、採用するケースが少ないために不備になることが多いものです。

この書類を見れば、社員として採用するにあたってどのようなことを、気をつけなければならないか、また社員の側も、どのような覚悟を持って契約しなければならないかを把握することができます。

 

就業規則(アルバイト用)

就業規則(アルバイト用)

アルバイト用の就業規則を完備していない店舗が多くあります。ですが、これがトラブルのもとになっているのではないでしょうか?
アルバイトは情報源が限られているので、誤解していることも多くあります。そのため、正しい運用を行っていても、疑問を持つ場合もあります。

アルバイト用の就業規則は、更衣室など誰でも読めるところに置いておき、何かあった時に見てもらうようにすればトラブルは防げます。また、人を大切にするところという印象も持ってもらえます。
ぜひ、作ってください。

就業規則マスター

就業規則マスター

アルバイトの就業規則も大切ですが、一般的な(社員向けの)就業規則も重要です。実は就業規則は厚生労働省などがモデルを出していますが、規模の大きい一般企業向けで、飲食店向けとは言えません。
ぜひ、労働条件にあったものを作成してください。

 

賃金規程マスター

賃金規程マスター

賃金規定が不明瞭なまま日々の運用がなされることがあります。これも大きなトラブルの一つです。また、アルバイト側も誤解が生じていたり、正しく認識されていなかったりすることが多くあります。何かがあったとき、賃金規定を見てと言えばわかるという状況を作っていることは、双方の安心のためにも重要なことです。

 

労務管理の帳票は正しく管理

飲食店における労務管理は、法令遵守の意識が低いと知らぬ間に「違法状態」に陥ることがあります。特に注意が必要なのは、労働時間・残業・休憩時間・36協定・有給休暇の管理です。これらを日々の営業で感覚的に処理していると、トラブルが起きた際に証拠が残らず、店舗側が不利になります。

そこで、法令対応状況を簡単にいつでも確認できるようにしっかりと管理しておくことが重要です。勤務時間の上限、有給の取得率、休憩時間の確保などを定期的に点検し、違反リスクを可視化する仕組みを整えることで、安心して働ける環境づくりにつながります。また、労務監査や労働基準監督署の指導にも対応でき、経営の安定化にも寄与します。

また、毎年変わる最低賃金の対応も忘れずに行ってください。

外国人アルバイト採用時の帳票

外国人スタッフを採用する際には、通常の雇用書類に加えて、在留資格や就労条件に関する確認書類が必要となります。

まず、採用前に「①在留カード」「②資格外活動許可書」「パスポート」を必ず確認します。本人の書類であることはもちろん、有効な期限内であることもあわせて確認しておきます。そして、コピーを保管することが基本です。

① 在留カード(Residence Card)
外国人が日本で中長期的に在留する際に交付される身分証明書です。表面・裏面のコピーを必ず取得・保管しておきます。在留期間が切れていないか、就労可能な資格かを必ずチェックしてください。
特に、「在留資格(Status of Residence)」と「在留期間(有効期限)」を確認します。
例:「留学」「技術・人文知識・国際業務」「特定活動」など

② 資格外活動許可書(Permission for Other Activities)
「留学」や「家族滞在」など、本来は就労できない資格の人が働く場合、これが必要です。留学生の場合は、「資格外活動許可」がなければ一切の就労ができません。コピーを取っておき、勤務時間管理表と併せて保存しておくことが重要です。
また、許可内容の欄に「週28時間以内」などの条件が明記されています(学校が定める長期休暇中は「週40時間まで可能」など、資格条件を都度確認します)。
当然ながら、許容範囲内の勤務しかできませんので気をつけます。

③ パスポート
本人確認および在留資格確認の補助資料としてコピーを保管します。特に短期滞在(90日以内)などのケースでは、在留カードが発行されないためパスポートで確認します。

店舗側で作成すべき補助書類

外国人雇用状況届出書
これは正社員ではなく、アルバイトを雇ったときに提出する書類です。
外国人を雇用した場合は、ハローワークへ届け出が義務付けられています(労働施策総合推進法第28条)ので、この書類を作成します。
提出期限は雇用日から翌月の末日まで店舗所在地を管轄するハローワークに提出してください。離職時にも「離職届出」が必要です。

外国人雇用契約書(多言語版推奨)
雇用条件(勤務時間・賃金・休日など)を明記した契約書を交わします。「日本語+英語または母国語」で書かれていることがりそうです。
日本語が理解できない場合、母国語または英語で説明義務があります。トラブル防止のため、署名済みの契約書は双方で1部ずつ保管します。

最後に

飲食店は小さな事業であっても企業と一緒であるべきです。上記のような帳票類は、オープンしてから順次揃えていこうと思っていると時間がなくなり、なあなあで済ませてしまいがちです。そして、トラブルがあってからでは手遅れになってしまいます。そうならないために初期段階で、または、なるべく早い段階で揃えておくようにしましょう。それが、「きちんとしていて安心して働ける場所」となり、優秀な人材の確保につながります。